スポーツ犬の飼い主の方へ

「犬曰く」「犬は自然に走る生き物。怪我することを恐れすぎないで」~獣医師、長坂佳世さんインタビュー(3)より

 
犬猫のリハビリテーションを専門とする
『D&C Physical Therapy』の院長であり、
獣医師である長坂佳世さんの
スポーツ犬に関するお話を紹介いたします。
 


 
「アジリティなどのスポーツをする犬の体のケアについてお話します。アメリカでは犬のスポーツメディスンが進んできていて、アジリティだけでなくハンティングや犬ぞりなど、さまざまなドッグスポーツをする犬たちの運動前後のケアをするようになっています。
 
実際にアジリティを見にいき、運動前後のケアがされていないことがよく分かりました。アジリティの現場にいたら、犬はアジリティがやりたくて仕方がない状態になりますよね。ものすごい勢いで走って、ゴールしたら「はい、お終い」となってしまいがちなようです。
 
去年まで飛べていたハードルを飛べなくなったという犬がいまして、股関節など整形の検査をしたのですが、何も異常がでませんでした。
 
けれども実際に犬の体を触ってみたら、背中がカメの甲羅のようにガチガチになっていたんです。あの状態では伸びるべき筋肉が伸びるわけもなく、そのために後肢がハードルに引っかかってしまっていたのだ、ということがわかりました。その都度マッサージをするなどのケアをすれば、アジリティなどのドッグスポーツを楽しめる期間は、もっともっと長くなるんですよ。
 
スポーツと怪我は切っても切り離せないものだといいます。人のスポーツ選手などを見ていますと、怪我はついてくるものだという大前提で運動していますよね。だから治療もしますし、リハビリもします。けれどその先には復帰があります。実際アジリティをしている飼い主の方も、これと同じように理解していると思うんです。犬もスポーツをするならば怪我はつきものだと。もし怪我をしたら治せばいいのです。それが私たちの役割であると思っています。
 
犬種によって差はあるものの、基本的に犬は自然に走る動物。だからこそドッグスポーツについても否定的にではなく、きちんとケアをすることで対応していくのが大事です。」